哲学者のつぶやき

哲学科出身者が考えたことを適当に書くブログ

人生に意味なんてない

「人は何のために生きているのか」とか「人生の意味は何か」と問われることがある。率直に言ってしまえば、人生に意味というものはない。人間という生物が生まれてきたのは、物理法則と進化のプロセスを経てただ起こっただけのことであり、何か目的があって起こったわけではないからだ。神のような知的な存在が何らかの目的をもって人間をつくったというのならば、人間やその人生に意味はあるということはできるかもしれないけど、神がいると信じるべき根拠は乏しい。やはり人間は、物理法則にしたがった物体同士の化学反応・自然淘汰のプロセスを経て生まれたと見るのが妥当だ。物理法則は意思や目的を持っていないし、その意味で人間がいるのは何か目的があるからではないといえる。

 

しかし、これは別に人間に限ったことではない。世界にある人工的なもの以外はすべてそうだ。山や海や空、鳥や猿や花やウイルス、雲や波や風、月や太陽など、自然界のものは何か目的があって存在しているわけではない。ただ存在しているだけだ。そもそも世界はただあるだけであって、何かのために存在するわけではない。車やパソコン、かなづちやボールペンなど、世界にある目的のあるものはだいたいが人間が意図的に生み出したものなのだ。世界にはそもそも意味や目的はない。それは、人間が生み出しているのだ。

 

人間は本来的に目的志向的な動物だ。これは、何か目的を設定してそれを達成することに喜びを覚える個体のほうが、そうでない個体より、生存上有利なことが多かったからなのかもしれない。十分な食料を得ること、安全な寝床を確保すること、獲物を一撃で仕留められる武器をつくることなどに没頭し楽しむことができれば、生存上有利になる。人間のこうした「目的を求める心」が、人生という本来目的のないものにも意味を求めようとしてしまうのかもしれない。

 

「人生の意味」の問題には、こうした目的を求める人間の性質が絡んでいて、それが「人生に意味はない」という簡単な答えを見つけにくくしているのかもしれない。