哲学者のつぶやき

哲学科出身者が考えたことを適当に書くブログ

死ぬのが怖い

哲学科出身だと言うと、「どうして哲学科を選んだの?」と聞かれることがある。そういうときはだいたい、「高校時代に哲学の入門書を読んで面白かったから」とか答えているんだけど、実際のところもっと切実な思いがあった。それは「死ぬのが怖い」という感覚だ。

 

高校の終わりから大学の始めにかけて、取り憑かれたように「死」のことを考えていた時期があった。「死」といっても、「死にたい」という気持ちではなく、「死ぬのが怖い」という気持ちだ。「死んだらあとはもう永遠の無で、何億年経っても何兆年経っても生き返ることはないんだな」とか「永遠の無っていったいどういう感じなんだろう」とか、「どうせ死んでしまうならどう生きたって同じなんじゃないか」とか、そういうことを受験を控えた高校3年の夏休みに勉強もせず家の窓から空を眺めつつ考えていた。この「永遠の無」というのが怖くて、「死ぬのって怖いな。死にたくない。永遠に生きたい」と思っていた。

 

たとえば、何兆年か後に生き返ることができるのなら、それは僕にとって全然怖くない。実質、それは普通より長いだけの睡眠だ。死が恐ろしいのは、「無になる」ということ自体ではなく、「無が永遠に続く」というところにあるんじゃないだろうか。

 

就活したり就職したりするうちに、そういう感覚はほとんどなくなってしまった。まあ、死の恐怖に囚われて生きるのって楽しくないし、自分の幸せを考えればこれでよかったのだと思う。あの頃の感覚を取り戻したいとも思わない。ただ、死に対するそういう感覚が、死って何なのかとか、生って何なのかとか、そういう根本的なことを考える動機になっていたのだろうと思う。